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崇国夫人
雲肌麻紙に岩絵の具 30号F 2010 年
日春展
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崇国夫人は、中国の南宋の宰相「秦檜」の孫娘です。祖父の威光で、わずか七歳で「崇国夫人」の称号を授けられました。
秦檜は、北宋を滅ぼした金との講和を推進し、英雄として名高い主戦派の将軍「岳飛」を謀殺するなど、後世に悪名を残した、いわゆる姦臣といわれる人です。しかし、後に中国を支配した清王朝では、「秦檜」は好意的に評価もされています。金は、清の祖に当たる同じ女真族の国であったからですが、歴史というのは、その時代や考察する人の目でどのようにも解釈が変わっていく、これは分かり易い例だと思います。 あるとき、この崇国夫人の愛猫が、突然行方不明になりました。南宋の都「臨安府」は、上へ下への大騒ぎになります。大捜索にも関わらず、結局猫は見つからずじまい。捜索に加わった役人達は、職務怠慢で処罰されそうになります。困りはてた役人が、珍しい金色の獅猫(長毛種の猫。宋時代に流行りました)を崇国夫人に献上したところ、なんとか事なきを得ました。 猫一匹に都の大勢の大人達が右往左往した中、当の少女は無邪気に、涼しい顔で、金色の獅猫を抱いている………この絵はそんな姿を描きました。 |