樹根に
雲肌麻紙に岩絵の具  30号F 
日春展
 

 伊豆に住んでいたころ、自宅そばの山道で、鳥の遺骸を見つけました。獣に食べられ羽根が散乱した、死骸というよりは残骸といったほうがよいものでしたが、黒い土の上に落ちた白い羽毛が印象的で、しばらく立ち止まって、なんの気なしに眺めていました。
 
 一か月ほどして、飼っていたシラコバトが死んでしまい、その遺骸を写生しているうち、ふと、山道で見かけた鳥の羽根を思い出しました。
 
 子供のころは、死はとても遠く、また恐ろしいものでもありました。しかし年を経るにつれ、子供の時よりは、死をずっと身近に感じるようになりました……それは、自分が死ぬであろうということより、むしろ、生きていく過程で、自ずと、いくつかの身近な人の死を、経験してきたからかもしれません。

 鳥の死骸を描くのは、今は思いもつかないことですが、この絵を描いた時は、なにか気構えることもなく、とても自然な気持ちで描いていました。


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